Japanese
English
綜説
肺における結合組織,接着分子と細胞骨格
Extracellular Matrix, Adhesion Molecules and Cytoskeleton of the Lung
阿部 達也
1
,
佐藤 研
1
,
本宮 雅吉
1,2
Tatsuya Abe
1
,
Ken Satoh
1
,
Masakichi Motomiya
1,2
1東北大学抗酸菌病研究所内科学研究部門
2仙台逓信病院
1Department of Medicine, Research Institute for Chest Diseases and Cancer, Tohoku University
pp.308-318
発行日 1993年4月15日
Published Date 1993/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404900644
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はじめに
Crystalらによって著された“The Biochemi-cal Basis of Pulmonary Function”(Marcel Dek-ker社,1976年刊)は肺の働きを生化学の観点から説いた名著であるが,そのなかの一章「肺の結合組織」ではコラーゲンとエラスチン,それにプロテオグリカンが取り上げられているに過ぎない1).その後の研究の発展は目ざましく,フィブロネクチン(従来は寒冷不溶性グロブリンと呼ばれていた)についての知見の集積,新型コラーゲンの発見(今や13種にも及ぶ!),そしてラミニンといった新しい結合組織タンパク質の同定が進んでいった.その結果,現在では表1に示したような多種の結合組織成分(細胞外基質)が,様々な細胞成分とともに肺を構成していると考えられている.さらに結合組織は,肺を構成している細胞の極性や分化を保持する生育母地の役割を担っていることも知られるようになった2).
ところが学問の進歩はこれにとどまらず,最近になって細胞と結合組織あるいは細胞と細胞との接着の領域にまで踏み込むようになった.そこで,表1には新たに「細胞接着分子」の一欄を設ける必要があろうかと思う.これらの物質のあるものは,結合組織との接着を通し細胞骨格ネットワークと連動して細胞の接着,伸展,移動,変形を促進する機能をも持つと考えられる3).
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