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時間生物学の研究は近年盛んに各方面でなされており,ホルモンなどの検査値は採血時間により正常範囲が異なり,狭心症,不整脈など時刻による発生頻度が異なる疾病も存在する。睡眠障害や鬱病なども生体リズムの異常より引き起こされると考えられている。また昼夜交代勤務者1,2)や航空機の乗務員3〜6)の作業能率,疲労などの検討にも必要不可欠である。生体リズムの解明には時差により脱同調し再同調する過程が極めて有用な情報を与えてくれるが,実験室と異なり環境を一定にすることや,費用の点での難点がある。
一方,時差ボケとは4時問以上の時差のある距離をジェット機などで高速で移動した際,生体リズムをつかさどる体内時計と到着地の時刻にずれが生じ,心身機能が一時的不調和状態に陥ったものである。生体リズムが飛行により乱れることは,Wiley Post(1931)7)が8日間で世界一周した際に自分の生体リズムを記録して報告している。その後1952年頃より学問的に取り上げられ,1970年代になりジェット旅客機の需要が急増してから大きな問題となり,Beljan(1973)8)は非同調症候群(Desynchronosis syndrome)としてまとめ航空宇宙学会に発表している(表1)。最近では睡眠—覚醒障害の診断分類9)にrapid time zone change(jet lag)syndromeと示されたこともあり,jet lag syndrome(時差ボケ)と呼ぶのが一般的になりつつある。佐々木ら10,11)が,民間航空機乗務員257人に時差ボケの症状について調査した結果,最も多いのは表2に示すように睡眠覚醒障害であった。以下はじめに睡眠について,後半に心拍数を含めた生体リズムについて述べる。
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