Japanese
English
特集 生体リズムからみた循環器疾患
睡眠中の循環動態変化
Cardiocirculatory changes during sleep
塩見 利明
1
,
前川 正人
1
,
渡辺 務
1
Toshiaki Shiomi
1
,
Masato Maekawa
1
,
Tsutomu Watanabe
1
1愛知医科大学第3内科
1The 3rd Department of Internal Medicine, Aichi Medical University
pp.641-647
発行日 1990年7月15日
Published Date 1990/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404900173
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はじめに
1953年REMs(rapid eye movements)の発見が契機となり,睡眠の生理に関する研究は飛躍的に発展した。1960年代には,睡眠中の循環動態変化に関しても当時として優れた2,3の研究が行われている1〜3)。1970年代の後半には,sleep apnea syndrome(SAS)の疾患概念が確立され,それ以降は睡眠中の呼吸生理に関する研究が非常に活発になった。しかし,睡眠中の循環生理に関しては,心拍数を除けば,1960年代から今日まで約30年の間にほとんど進歩がみられない状況であり,いまだ不明な事象が少なくない。睡眠中の循環生理に関する研究が遅れた理由としては,1)睡眠の客観的評価には睡眠ポリグラフィ(polysomnography;PSG)による検索が必須であるが,PSGは技術的に厄介であり,検者側は徹夜を強いられる。2)睡眠の研究は元来心理学者,大脳生理学者,精神神経科医が中心に行ってきたものであり,睡眠に関心を示す循環器専門医は非常に少なかった,3) PSG記録下に睡眠妨害なしに行える心機能評価法が開発されなかった,などが考えられる。
米国では日本に比べて睡眠障害の診療および研究が盛んであり,1989年現在,米国内に166か所の睡眠障害センター,約2000か所の睡眠障害クリニックがあるが,施行の厄介なPSGに関しては,最近,clinical poly-somnographerの資格認定試験が始まり,より確立された検査法になりつつある。現在のところPSG以外に睡眠の客観的な尺度は開発されていないため,睡眠中の循環動態変化に関してはPSGを抜きにして論じることはできない。
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