増刊号 周産期診療のための病態生理
[産科編]
妊娠による母体の変化と妊娠維持
なぜ循環動態が変化し妊娠が維持されるのか。循環動態の変化は?
吉松 淳
1
YOSHIMATSU Jun
1
1国立循環器病研究センター産婦人科
キーワード:
循環血液量
,
絨毛間腔
,
心疾患合併妊娠
,
FGR
Keyword:
循環血液量
,
絨毛間腔
,
心疾患合併妊娠
,
FGR
pp.6-9
発行日 2023年12月28日
Published Date 2023/12/28
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000001225
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絨毛間腔―血管の変化
絨毛間腔は母体血で満たされている。胎盤は胎児の絨毛が母体血のプールにつかっているような構造であり,胎児血は絨毛を介して栄養・代謝物質の輸送やガス交換を行う。ガス交換は主として濃度勾配に依存する拡散によって行われる。絨毛間腔への血流は母体の子宮筋層を貫くらせん動脈が担っている。First trimesterの間は胎盤に開口する部分に絨毛外栄養膜細胞(extravillous trophoblast:EVT)が蓋をしており,胎盤は低酸素状態に置かれて胎児を酸化ストレスから守る。妊娠13週の終わり頃にEVTがらせん動脈の壁に侵入し,血管内皮細胞と置き換わる。その結果,らせん動脈は弾性が高まり,また,血管径が増大する。このらせん動脈の変化は,より多くの酸素分圧の高い血液を絨毛間腔に送り込むことに寄与する。この現象は妊娠20週までに完成し,このリモデリング不全が妊娠高血圧症候群の病因であることはよく知られるところである1)。
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