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あとがき
巽 浩一郎
pp.1236
発行日 2015年12月15日
Published Date 2015/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404205871
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リンパ脈管筋腫症(LAM)という難病に立ち向かい,新薬として「シロリムス」を保険収載までもっていった一研究者の医師人生をかけた戦いの物語が,本特集号の中の「難病新薬開発の険しい道—医療を蝕む市場原理主義の対立軸を目指して」である.中田光教授は,稀少性呼吸器疾患であるLAM,肺胞蛋白症の病因解明,新規治療法の開発に多大な尽力をしてこられた.特集の中に記載されているが,一人でこの偉業をなしえたわけでなく,井上義一,瀬山邦明,林田美江というエネルギー溢れる同士がおり,ここまで到達しえた.孤発性LAMは,体細胞遺伝子変異(TSC2遺伝子異常)がその病因となり発症,mTOR阻害薬が血管筋脂肪腫そしてLAMに有効であることが報告されている.しかし,LAMはその病状の進行には個体差が大きく,どの時期にどのような治療を選択していくかはまだ解決されていない.新薬で常に問題になるのは,「益と不利益のバランス」である.2015年秋の時点で,幸いシロリムスでは大きな有害事象は稀のようである.
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