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はじめに
リンパ脈管筋腫症(lymphangioleiomyomatosis, LAM)は,ほぼ女性にのみ発症する希少疾患であり,肺の囊胞性破壊を特徴とするほか,腎臓をはじめとする血管筋脂肪腫,後腹膜腔などのリンパ脈管筋腫(lymphangioleiomyoma),乳び漏(胸水,腹水)といった肺外病変を伴う全身性疾患である1,2).病理学的には,肺や体軸リンパ系において,平滑筋細胞とメラノサイトの特徴を併せ持つ腫瘍細胞(LAM細胞)の増殖がみられる.LAMには結節性硬化症(tuberous sclerosis complex, TSC)に合併して発症するTSC-LAMと孤発性LAM(sporadic LAM)とがある.TSCはてんかん発作や多臓器の過誤腫性病変を特徴とする遺伝性疾患であり,原因遺伝子として腫瘍抑制遺伝子であるTSC1(第9染色体)とTSC2(第16染色体)が同定されている.TSC患者は先天的にTSC1またはTSC2のいずれかにおいて片方の対立遺伝子の変異を有しており,後天的にもう片方の対立遺伝子にも変異が生じることによって腫瘍病変が出現すると考えられている.細胞の起源は不明であるが,この腫瘍病変の一つとしてLAMを発症すると考えられる.これに対して,孤発性LAMはTSC2の体細胞変異により発症すると考えられている.このような遺伝子変異によって,細胞内シグナル伝達系においてラパマイシン標的蛋白質(mammalian target of rapamycin, mTOR)の恒常的な活性化が起こり,LAMの病態につながることが解明されてきた.
LAMは通常慢性の経過で進行する.肺においてはLAM細胞の増殖と関連して多発する囊胞が形成され,進行すると呼吸不全を呈する.HRCT画像は特徴的であり,両肺野に散在性に円形の薄壁囊胞(数mm〜3cm大)がみられる3).肺病変の程度や進行速度には個人差がみられ,囊胞性病変が高度かつ呼吸不全への進行を認める症例から,長年にわたり囊胞の増加が乏しく症状も呈さない症例までみられる4).呼吸機能検査では肺拡散能の低下と閉塞性換気障害が多くみられる5,6).また,囊胞性病変の進行度によらず自然気胸の合併がみられ,特に若い年代において気胸が発見契機となることが多い.
本稿では,これまで国内において行われた疫学調査の結果を含め,LAMの病状と自然経過の特徴につき概説する.
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