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はじめに
リンパ脈管筋腫症(lymphangioleiomyomatosis;LAM)とされる症例の報告は,世界的には1940年前後から文献上にみられ,1960年代からlymphangiomyomatosis,1970年代からlymphangioleiomyomatosisという呼称が混在して用いられてきたが,現在ではほぼ後者に統一されている.本邦においては1970年に山中,斎木が,“び慢性過誤腫性肺脈管筋腫症”として報告を行ったのが最初である.肺に多発性囊胞形成を来し,病理学的には肺およびリンパ系組織に平滑筋様細胞の増生をみるという特徴的な病像を呈するが,LAMにおける遺伝子変異の報告がなされるまで長らく原因不明とされ,病像から女性ホルモンとの関連や結節性硬化症(tuberous sclerosis complex;TSC)との関連が推測された.また,希少な疾患であるため多くは症例報告レベルにとどまり,1975年にCorrinらにより28例の臨床病理学的特徴が報告されたが1),それ以前を含めたLAM症例の報告は合計57例と記載されている.その後,病理所見や胸部CT検査などにかかわる報告が集積され,1990年代以降には数十例単位での統計的報告が各国,地域から相次いだ.Kitaichiらによる本邦および韓国,台湾からの46症例2)のほか,米国StanfordおよびMayo Clinicからの32症例3),米国NIH(National Institutes of Health)からの35症例4),フランスからの69症例5),イギリスからの50例6)といった報告であり,病理診断された症例を中心に臨床症状や各種検査所見,予後因子などに関する検討が行われた.1997年には米国NHLBI(National Heart, Lung, and Blood Institute)を中心として国際的なLAM患者登録機関が設立され,データの蓄積と報告がなされている7,8).
本邦において1997年に臓器移植法が施行されたこともあり,移植適応疾患としてLAMへの認識が高まった.2003年度からLAMが厚生労働省,難治性疾患克服研究事業の対象疾患に指定され,呼吸不全に関する調査研究班においてLAMの全国横断調査が開始された.2006年度からは2回目調査が行われ,2008年度から現在にかけてはLAMを含めた同研究班の対象疾患に関するインターネットを用いた調査(症例登録)の準備が行われ,現在登録が開始されつつある9).本稿では,過去2回の疫学調査結果を中心に,LAMの疫学および病像の概説を行う.
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