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はじめに
リンパ脈管筋腫症(lymphangioleiomyomatosis;LAM)は,主として妊娠可能年齢の女性に発症する比較的稀な疾患で,労作時呼吸困難,血痰,乳び胸水などの症状・所見を機に診断される.自然気胸を反復することが多く,女性自然気胸の重要な基礎疾患の一つとして認識されている.
肺病変が進行すると拡散障害と閉塞性換気障害が出現するが,進行の速さは症例ごとに多様であり,比較的急速に進行して呼吸不全に至る症例もあれば,年余にわたり肺機能が保たれる症例もある.病理組織学的にはやや未熟で肥大した平滑筋様細胞(LAM細胞)が,肺内にびまん性,不連続性に増殖することを特徴とする.一方,LAM細胞の組織化学上の特徴として,melanocyteのマーカーであるgp100を認識するHMB45抗体が陽性となることが知られ,診断上重要である.LAM細胞は集簇して結節性に増殖し,肺(嚢胞壁,胸膜,細気管支・血管周囲など),体軸リンパ節(肺門・縦隔,後腹膜腔,骨盤腔など)にも病変を形成する.腎血管筋脂肪腫を合併する場合もある.
本疾患は1940年前後から記載され始め,Frackら(1968)により初めてpulmonary lymphangiomyomatosisという言葉が用いられ1),Corrinら(1975)により28例の臨床病理学的特徴がまとめられた2).現在の(pulmonary)lymphangioleiomyomatosisという用語は,Carringtonら(1977)が本疾患の生理学的,病理学的,画像の各所見の関連性を詳細に検討した際に使用され,以降,lymphangiomyomatosis,lymphangioleiomyomatosisともに用いられ続けている.本邦においては,山中,斎木(1970)が2例の剖検例と1例の開胸肺生検例を検討し,びまん性過誤腫性肺脈管筋腫症として報告したのが最初である3).症例の集積に伴い,後腹膜や骨盤腔リンパ節病変(lymphangioleiomyoma)が主体で肺病変が軽微である症例の存在も認識されるようになり,「肺」を病名から除いてリンパ脈管筋腫症(lymphangioleiomyomatosis)という病名で包括して呼ばれるようになってきている.
近年,LAMに関する精力的な研究が基礎と臨床の両面から進められ,病因解明や新しい治療に繋がることが期待される成果が得られている.その一方で「遺伝子多型」にテーマを絞る限り僅か2報告を認めるのみである.したがって本稿では,最近のLAM研究の成果を網羅的に紹介し,今後「遺伝子多型」研究の視点が特に有用と考えられる項目に関しては,その旨の考察を加えた.
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