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はじめに
リンパ脈管筋腫症lymphangioleiomyomatosis(LAM)は,ほぼ例外なく妊娠可能年齢の女性に発症する比較的稀な疾患である.労作性呼吸困難,自然気胸,血痰などを機に診断されることが多く,閉塞性換気障害を認める.呼吸不全に至った進行例については肺移植の適応となる.病理組織学的には,平滑筋細胞様のLAM細胞が肺胞壁・胸膜,細気管支周囲などにびまん性・不連続性に増殖し末梢気腔破壊・嚢胞形成を伴う.またLAM細胞は,エストロゲンレセプター(ER),プロゲステロンレセプター(PR)1),メラノーマ関連抗原であるHMB45などがしばしば陽性となるという特徴があり2),診断上重要である.LAM細胞の増殖は,肺のみならず骨盤腔・後腹膜・縦隔のリンパ節病変,子宮などの肺外病変を形成することもある(lymphangioleiomyoma).その他,腎臓に血管筋脂肪腫angiomyolipoma(AML) を合併する場合もある.
LAMは常染色体優性遺伝性疾患である結節性硬化症tuberous sclerosis complex(TSC)の肺病変としても発症する.これをTSC-LAMと呼び,孤発性sporadic LAMと区別するが,両者に病理組織学的所見上の差は認めない3).TSCは,近年の分子生物学的および遺伝学的研究により,Knudsonの“2-hit theory”が当てはまる癌抑制遺伝子症候群,すなわち癌抑制遺伝子であるTSC1またはTSC2遺伝子異常により,諸臓器に過誤腫性病変を生じる疾患であることが明らかにされたが4),sporadic LAMのLAM細胞からも同様の遺伝子異常が検出されることが判明した5,6).この発見をbreak throughとして,LAMの病因や病気の進展に関する新知見が集積しつつあり,それらを踏まえた治療法の模索が始められている.また,疾患に対する認識の広がりもあってか,診断例が増加していること,臨床経過に多様性があり軽症例も存在すること,等々の新しい知見も得られてきており,基礎・臨床の両面において活発な研究が世界的に展開されている.本稿では,その最新の話題を取り上げ,自験データを交え解説したい.
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