Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
リンパ脈管筋腫症(lymphangioleiomyomatosis;LAM)は,平滑筋様細胞の形態を示すLAM細胞が肺,体軸リンパ系(肺門・縦隔,上腹部から骨盤部にかけての後腹膜腔)で増殖して病変を形成し,病変内にリンパ管新生を伴う腫瘍性疾患である.LAM細胞により肺実質は破壊されて多数の囊胞が生じ,最終的には呼吸不全となる.また,病変内にはリンパ管とともに豊富なリンパ流が存在するため,乳び漏(乳び胸水や腹水など)やリンパ浮腫など,リンパ系機能障害による症状や所見を認めることがある.LAMは,結節性硬化症(tuberous sclerosis complex;TSC)に合併するLAM(TSC-LAM)と,LAM単独で発症する孤発性LAM(sporadic LAM),の2種類の病型がある.
日本でのLAMの有病率は,100万人あたり約1.9〜4.5人と推測されている希少難病である1).その希少性ゆえ,確立された治療法はなく,症例報告や観察研究,あるいは他疾患の治療や病態研究の成果などを参考に治療を工夫する試みが続いた.しかし,米国のLAM患者団体(LAM foundation),研究者,製薬業との協力によりLAM研究は飛躍的に進歩し,2011年には国際共同治験(MILES試験)によりLAMに対する分子標的薬としてのシロリムスの臨床的有効性が示された.国内では,日本人LAM患者に対するシロリムスの安全性評価を主目的とした多施設共同医師主導治験(MLSTS試験)が2年間の継続投与の計画で2012年8月に開始され,その1年間の中間報告結果から日本人LAM患者に対する安全性に重大な問題は認められないことが確認された.その結果,国内では2013年10月に製造販売承認申請がなされ,2014年7月に「リンパ脈管筋腫症」の効能・効果で薬事承認された.シロリムスは,国内ではノーベルファーマ社が「ラパリムス®錠1mg」の商品名で販売している.ラパリムス®を処方するにはLAMおよびラパリムス®の詳細をまず熟知してもらうためe-ラーニング(ノーベルファーマ社のラパリムス製品サイトhttp://rapalimus.jp/)を受講することが求められている.製品サイトにはラパリムス®に関する詳細な情報(製品情報概要書,適正使用ガイド)のほか,診療を支援するための患者向け資材がダウンロードできるようになっているので活用されたい.
本稿では,LAMの病因とシロリムスの臨床研究や治験について紹介すると同時に,今後の課題について言及する.
Copyright © 2015, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.