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特集 スタチン投与後のレジデュアル・リスク
序文—確立されたスタチン治療時代の残存リスクとは
Beyond Statin Therapy, Residual Cardiovascular Risk:Current Status and Future Strategies for Management
宮内 克己
1
Katsumi Miyauchi
1
1順天堂大学循環器内科
1Department of Cardiovascular Medicine, Juntendo University School of Medicine
pp.807-808
発行日 2015年9月15日
Published Date 2015/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404205775
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- Abstract 文献概要
虚血性心疾患の予後は改善し,時代と共に心血管死亡も確実に減少している.その成果は冠危険因子管理に対する薬物治療が整ってきたことも関与している.特に,スタチンがこの予後改善の大きな担い手であったことに誰も異論はないはずである.スタチンはLDL-Cを下げるだけでなく,いわゆる多面的作用である抗炎症効果などの機序を通じ,動脈硬化の進展を阻止し,心血管イベントを減少させることも明らかになっている.
しかし,それでもイベントはゼロに到達しておらず,スタチンを含め現行の薬物治療や生活習慣の改善では十分でないことを臨床医なら誰しも実感していることである.そこで注目されているのが確立されていないリスク,すなわち残存リスクということになる.残存リスクは大規模臨床試験や疫学研究などで,そのリスクが存在すればイベントが増加することが明らかになる,あるいはバイオマーカーとしての価値,その値が上昇(または低下)すればイベントが増加することが証明されていることが第一の条件である.さらにスタチン投与下,LDL-Cが70mg/dl以下になっても,そのバイオマーカーがイベント増加に関与した場合に,そのバイオマーカーは残存リスクとして認知される.そして,そのバイオマーカーを介入によって下げることで,予後が改善すればそのバイオマーカーは残存リスクとして確立されることになる.さらにはスタチンを使用してもイベント減少効果が十分とはいえない糖尿病や慢性腎臓病,さらには高尿酸血症なども冠危険因子の一つでもあるし,残存リスクでもある.
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