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はじめに
スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)が冠動脈疾患(coronary artery disease;CAD)をはじめとする動脈硬化性心血管疾患の発症・進展を抑制することが,多くの大規模臨床試験により明らかにされて久しい.スタチンは肝臓でのコレステロール合成を抑制することで最終的にLDLコレステロール値の低下をもたらす.動脈硬化抑制薬としてのスタチンの効果はこうした強力なLDLコレステロール低下作用により発揮されるものと考えられるが,それとは独立した抗動脈硬化作用(pleiotropic effects)も知られており,なかでも抗炎症作用が注目されている.JUPITER(Justification for the Use of statins Primary prevention:an Intervention Trial Evaluating Rosuvastatin)試験ではLDLコレステロール値が130mg/dl以下だが,CRP値が0.2mg/dl以上の中等度リスクまでの患者17,802人を無作為に2群に分け,各群にロスバスタチン20mg/日またはプラセボを投与した.最長5年間の観察の結果,ロスバスタチン群(n=8,901)はプラセボ群(n=8,901)に比べCRP値の下降率は有意に高く,1次エンドポイントである主要心血管イベント(心血管死,脳卒中,心筋梗塞,不安定狭心症による入院,血行再建術の施行)の発症が44%も低率であった(図1)1).積極的LDLコレステロール低下に加え,炎症を標的とした動脈硬化性疾患治療の妥当性を示す最新のエビデンスといえる.
このようにスタチンの持つ冠動脈疾患の一次および二次予防効果は確立されたものとなった.しかしながらスタチンをもってしても冠動脈疾患発症,再発は決してゼロではなく,われわれはこれを限りなくゼロに近づける努力を怠ってはならない.本稿ではスタチン投与後の残存リスクに対するイコサペントエン酸(eicosapentaenoic acid;EPA)製剤による介入の可能性について論ずる.
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