特集 高齢者医療ハンドブック―高齢者医療におけるダイバーシティへの対応
第Ⅸ章 高齢者における薬剤使用の注意点
2.スタチン
川口 裕子
1
,
宮内 克己
1
Yuko KAWAGUCHI
1
,
Katsumi MIYAUCHI
1
1順天堂大学医学部附属東京江東高齢者医療センター循環器内科
pp.913-917
発行日 2018年4月1日
Published Date 2018/4/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_naika121_913
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Summary
▪脂質異常症,なかでも高LDL-cholesterol(LDL-C)血症は冠動脈疾患や脳卒中などの動脈硬化性疾患の最も重要な危険因子であり,加齢に伴い動脈硬化は進展することから高齢者でも常に注目すべきリスクである.
▪LDL-Cは高ければイベント発症リスクが増加し,下げれば下げるほどイベントは低下するが,このエビデンスはイベント発症リスクが高い高齢者でより顕著である.
▪ガイドラインでも1次予防ハイリスクや2次予防でのスタチン使用の推奨度はきわめて高く,薬物治療の核となるスタチンであるが,80歳以上の超高齢者は大規模臨床試験において介入対象から除外されていることが多く,エビデンスは十分とはいえない.
▪超高齢者では併発疾患が多く,併用薬によってはスタチンの血中濃度が上昇し,副作用が出現しやすいことを理解し,投与量などに十分に注意する必要である.
▪高齢者でも食事療法と運動療法が基本になるが,高齢者では元々食事量が少なく,とくに後期高齢者では食事量が減少すると栄養のバランスを崩し,筋肉量を落とし,フレイルを促進するリスクが増加することも忘れてはならない.
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