Japanese
English
特集 呼吸器疾患治療の標的分子
肺胞蛋白症
Pulmonary Alveolar Proteinosis
中田 光
1
Koh Nakata
1
1新潟大学医歯学総合病院生命科学医療センター
1Bioscience Medical Research Center, Niigata University Medical and Dental Hospital
pp.340-347
発行日 2015年4月15日
Published Date 2015/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404205681
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はじめに
1994年のDranoff, Stanleyらによる肺胞蛋白症(PAP)のモデルマウスの発見から始まるPAP研究のルネッサンス1,2)は,病因・病態研究に留まらず,治療分野まで革命をもたらしている.1996年には,Seymourらが,GM-CSF皮下注療法が有効であることを報告し3),次いで1999年にわれわれが特発性肺胞蛋白症患者にGM-CSF自己抗体が高濃度に存在することを発見し4),肺におけるGM-CSF生物活性が自己抗体により,中和されることが病因であると提唱したが,2009年,米国Cincinnati大学のグループがカニクイザルに患者自己抗体を輸注することにより,モデル動物を作製することに成功し5),同症は自己免疫性肺胞蛋白症(aPAP)と呼ばれるに至った6).GM-CSF皮下注療法は,吸入療法へと引き継がれ,世界8カ国以上で試されている.一方,本症の約8%を占める続発性PAP(sPAP)では,その疫学が明らかにされ,8割以上が造血系悪性腫瘍を基礎疾患とすることがわかった7).非常に稀であるが,GM-CSF受容体の遺伝子異常によって発症する遺伝性肺胞蛋白症があることが,鈴木らにより報告され8),治療のために基礎研究が始まっている9).本稿では,これら3型のPAPの治療標的分子について解説したい.
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