Japanese
English
綜説
肺胞蛋白症―基礎から臨床まで
Pulmonary Alveolar Proteinosis
田澤 立之
1
,
中田 光
1
Ryushi Tazawa
1
,
Koh Nakata
1
1新潟大学医歯学総合病院生命科学医療センター
1Bioscience Medical Research Center, Niigata University Medical and Dental Hospital
pp.1147-1154
発行日 2009年11月15日
Published Date 2009/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101369
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はじめに
肺胞蛋白症(pulmonary alveolar prtoeinosis;PAP)は,1958年の最初の27例の報告以来,PAS(periodic acid-Schiff)染色で陽性に染まる脂質を含む蛋白物質が末梢気腔内に蓄積する稀な疾患として定義されてきた1~3).貯留するPAS陽性物質は,リン脂質,アポ蛋白,血清由来の蛋白,細胞成分などからなる肺サーファクタント物質由来であることが明らかになり,生理食塩水による肺洗浄が治療法として開発されたが,30年以上病因は不明であった.最近15年間に分子生物学・肺疾患マーカー研究の進歩により肺サーファクタントの産生・代謝をめぐる分子メカニズムに新たな展望がもたらされ,稀少疾患研究組織の形成により,新規治療や疫学に関する知見も飛躍的に増加した.これらの進歩には本邦の研究者の貢献が大きい.
本症の90%は,肺胞マクロファージの分化増殖に関与する抗GM-CSF抗体による自己免疫性の肺胞蛋白症で,9~10%が血液疾患,悪性疾患,免疫疾患などに合併する続発性,そのほかSP-C遺伝子異常,ABCA3遺伝子異常などの先天性,GM-CSF受容体の異常によるものなどに分類される.
本稿では,自己免疫性の肺胞蛋白症を中心に,最近の進歩を含め,基礎から臨床面までを概説する.
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