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わが国における手術支援ロボットの研究開発と実用化への課題
わが国における手術支援ロボットの研究開発は世界的に見てもかなり早い段階から行われている.1985年に手嶋,舟久保らは眼科領域における角膜切除を支援するロボットシステムの研究開発を報告している1).また政府予算による研究開発も早期から行われており,新エネルギー技術産業技術総合開発機構(NEDO)の事業として,1995〜2000年に「脳腫瘍等手術支援システム」が行われ,定脳位手術を支援するマイクロサージェリ支援ロボットが開発され2),2002年には世界初の脳神経外科分野におけるロボット手術がHongoらにより報告されている3).
1999年から2004年にかけては日本学術振興会未来開拓学術研究推進事業により,東京大学,京都大学,大阪大学,九州大学の医工連携研究組織により「外科領域を中心とする手術用ロボティックシステムの開発」プロジェクトが実施された.この研究プロジェクトでは,中村らにより仮想的に心臓の拍動が静止した状態で手術操作を行うために必要となる,心臓拍動追従技術が世界に先駆けて開発されている4).本プロジェクトでは,手術ナビゲーション技術を統合した,内視鏡手術のためのマスタ・スレーブ手術支援ロボットの研究開発(図1)5,6),内視鏡マニピュレータの臨床応用研究と実用化7,8),整形外科分野における,ドリルの挿入位置と挿入姿勢を術前計画に従って正確に誘導するための,レーザ光を用いたガイダンスシステム(レーザガイダンスシステム)9),骨折整復操作をパワーアシストするロボット技術を用いた機器10),脊椎への穿刺操作を安全に実施するためのロボットの研究開発11)が行われた.それらのいくつかは臨床応用され商品化も試みられた.このような活動が行われた時期は,欧米において現在,臨床で広く応用されている,Intuitive Surgical社のda VinciTMシステムが登場してきた時期とほぼ同時期であり,わが国における研究開発の開始が遅れていたわけではない.
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