巻頭言
独創性研究とその実用化
牧野 堅
1
1慈恵医科大学
pp.237
発行日 1969年12月15日
Published Date 1969/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425902821
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先日内藤記念科学振興財団の助成金贈呈式に出席した際理事長よりきわめて注目すべき話がなされた。そもそも内藤豊次氏が本財団を設立した理由は同氏の永年にわたる薬業界での体験に基づくものである。今日日本で薬として使われている大部分のものは外国において発明開発されたもので,わが国で創製されたものはきわめて寥々たるものである故,日本独自の医薬を作るには基礎的な研究を振興させるということがもつとも重要であり,それには助成金その他の財政的措置が必要であると内藤氏は考えられたのである。そして内藤研究財団の運営を円滑にしてゆくための参考として欧米各国の研究助成に関する財団あるいはNIHを含めた所々の研究所など回られたのであるが,その際民間製薬会社がまつたく驚くべき努力を傾注して新しい医薬の開発に関する研究およびそれの生物試験の研究を行なつているのをみて,現在のわが国の状態で推移すると国際競争において日本の製薬界は危機に瀕するであろうと述べられていた。
欧州においてもR.RobinsonやA.R.Toddその他幾多の独創的俊英を輩出させた英国が製薬事業において米国その他の企業進出によつて著しく窮地に追い込まれている事実は人的資源の問題であるか?
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