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はじめに
1994年11月,九州大学で開催された第12回日本ロボット学会学術講演会の「ヒューマンロボットⅠ」のセッションにおいて,移乗介助を目的としたロボットアームが初めて提案された1).わが国で,福祉機器へのロボット応用が始まったのは,このころのことである.その後,翌1995年の同学会学術講演会(明治大学開催)においては「福祉」と名付けられたセッションが2つ登場し,発表件数も13件と一気に増した2).その後もこの開発傾向は高まり続け,日本国内に限っても,福祉分野へのロボットの応用研究は20年という歴史を経て今日を迎えている.
当時,たとえば介護現場で介護士に手を貸してくれるような肢体をもつ「ロボット」の将来イメージは,機械工学・ロボット工学を志す技術者の研究開発意欲を掻き立てた.また,急激に高齢化が進行しつつあった社会の人々の介護ロボットに対する期待はおのずと膨らんで行った.日本が,世界一の超高齢社会の時代を迎えた現在,ロボットの手でも借りようという研究開発の方向性に,疑義を唱える理由はない.しかし,よく知られているように,過去の長い福祉ロボット応用研究の過程において,大半の成果物は持続性をもって社会に形を残していない.そして今もなお,この傾向が根本的には続いているであろうと筆者は推察している.なぜなら一般に,ロボット技術を機器に搭載すると,大きく重くなることが避けられず,その割に単純な運動しか任せることができない.福祉現場の「している活動」のなかで,「のさばってしまう」からである.本稿では,とくに福祉ロボットの実用化支援体制を紹介するが,この投稿を機に,「使えるロボット機器」の開発のためにどのような工夫が必要かをあわせて考えてみたい.
本論に入る前に,ロボットの定義3)および,ロボット技術にかかわりの深い製品を人間との相互作用の観点で捉えた分類を紹介しておく.まず,定義に関しては,経済産業省によれば.3要素,すなわちセンサ+知能・制御+駆動系を備え,知能化された機械システムである.この定義からわかるように,ロボットは肢体をもたなくても意図した機能を果たすことができれば,ロボットと呼ばれることになる*1).つぎに,ロボット技術関連の製品を人間との相互作用のあり方として,物理的な侵襲・非侵襲の軸と自立性の高さ・低さの軸で分類した鳥瞰図を図1に示す5).同図には,ロボット技術関連製品の医療保険・介護保険の潜在的対象としての分類も示されている.
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