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低酸素性肺血管攣縮の歴史的経緯
低酸素性肺血管攣縮(hypoxic pulmonary vasoconstriction;HPV)は,古くて新しい研究テーマであり,その存在は19世紀半ば頃から認められていた.HPVの生理学的な意義については,多くの総説,成書に記載されている1,2).低酸素曝露は,体循環においては,低酸素から組織を守るためにそれぞれの臓器への血管が拡張する.しかし,肺循環においては,HPVの存在により肺胞気酸素分圧(PAO2)が低い肺胞への血流が減少することにより,PAO2がより高い肺胞への血流を多くし,いわゆる換気血流不均等分布の是正を行うことによって,肺全体としての酸素化を良い方向に維持する.さらにHPVは,新生児が母胎にいる間にも認められている.出産時の第一声(産声)により,肺胞の開大とともに高濃度の酸素が入り,HPVが短時間で解除されることにより肺循環血流量が増加する.その結果肺におけるガス交換が開始されることになることは,よく知られたことである.また,疾患肺において肺高血圧を改善し,酸素化を改善するために使用される血管拡張薬の投与は,HPVの解除により逆に酸素化の増悪を招くことがあることは知られている.さらに,近年検討されている一酸化窒素(NO)の吸入は,換気の良い肺胞への血流量をさらに増やす可能性があり,呼吸不全疾患において期待される治療法であるが,いまだ未解決な問題がある3,4).
過去にHPVに関して,いくつかの疑問点が惹起された.a)低酸素刺激の負荷時間の差,低酸素の強さによるHPVの強さの違いなど生理学的な疑問,b)HPVが解剖学的にどの血管で起きているのか? c)低酸素曝露はどこで感知して,その結果どのような物質が産生/活性化されるのか? d)a)〜c)の結果,肺胞における低酸素曝露は,どのような経路で収縮が起こる細小動脈に伝わるのか? などである.
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