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最近1年の研究動向
肥大型心筋症は,多様な臨床像,表現型,遺伝子異常を持った遺伝的要素の強い疾患である.近年は,診断が進歩し,治療のオプションも広がっているが,まだ,かなりの症例は,致死的不整脈,心機能低下,心房細動などの危険性を有しながらも,無症状のまま診断されずにいる可能性がある.また,治療法として,突然死予防のための植え込み型除細動器,重症心不全への心移植,左室流出路狭窄に対する中隔焼却術や筋切除,心房細動に対するカテーテル治療などが可能になっている.このような積極的な治療法により,その予後は改善され,特に成人では年間の死亡率は1%未満に低下している1).
しかしながら,若年者では,成人に比べ予後は不良である.小児期の肥大型心筋症は,発症時期に2峰性のピークがあり,乳児期では,代謝異常や症候群など全身疾患の合併が多く,幼児期以降では,サルコメア遺伝子異常による家族性心筋症が多い.特に,1歳未満の発症と代謝異常,奇形症候群,拡張型心筋症あるいは拘束型心筋症とのmixed phenotypeが最も予後が悪い.最近,pediatric cardiomyopathy registryでは,1990〜2009年に登録された1,085の小児のHCM患者における,前方視的な長期予後の調査結果を発表している.代謝異常が最も予後が悪く,発症2年の時点では,69人中57%が,死亡あるいは心移植を受けている.次に予後不良であるのは,mixed phenotypeであり,拡張型心筋症との混合型は,69人中45%が,拘束型心筋症との混合では58人中38%が,発症後2年の時点で死亡あるいは心移植が施行されている.1歳未満の発症,奇形症候群との合併例では,2年後の死亡あるいは心移植の施行例は,各々21%と23%であった.これに対し,1歳以降に診断された407人の肥大型心筋症では,2年後の死亡あるいは心移植の施行例は,わずか3%と予後は良好で,成人と同等であった2).
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