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緒 言
スワンガンツ肺動脈カテーテル(PAC)から得られる情報が重篤な患者の呼吸循環管理には極めて有益であることは異論がない。肺動脈楔入圧および右心房圧は左右両心室の前負荷の目安となり,熱希釈法により心拍出量を測定すれば心機能曲線から左右両心室の機能が評価できる101)。この心機能曲線より,輸液療法,血管作動薬投与等の治療方針の決定ができる101)。混合静脈血酸素含量を測定すれば肺内シャント率と酸素消費量が算出できる。またKaplanらの報告102)によれば,従来の心電図では捕らえられなかった心内膜下虚血が肺動脈圧や肺動脈楔入圧の急激な上昇によって発見できる。さらに肺動脈の空気あるいは腫瘍栓塞では呼気炭酸ガス濃度の低下と同時に,肺動脈圧および右心房圧が上昇する103)。ごく最近では,PACのバルーンを膨脹させて楔入圧測定時に肺毛細管圧を測定しようとする試みもなされている104,105)。
PACは重症患者の全身管理と治療上有用なモニターであるものの,不正確な測定法や誤った測定値の解釈はその有用性を減じるのみならず,重症患者管理においてはむしろ有害でさえある21)。PACから得られる情報は,診断および治療方針決定において必ずしも絶対的なものではなく,その正確性および信頼性がさまざまな患者の病態あるいは測定条件により影響される事実,そして前稿106)で述べてきたように留置そのものが合併症を誘発することを臨床医は熟知する必要がある。したがって,本稿ではまず測定時の合併症を概観し,次にPACより得られる主な情報項目である肺動脈楔入圧測定,熱希釈法による心拍出量測定,および混合静脈血酸素飽和度測定における問題点について要約した。
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