Japanese
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綜説
スワンガンツカテーテル使用時の合併症と測定上の諸問題—1.カテーテル挿入・留置による合併症
Complications and practical problems in the measurements with the use of Swan-Ganz catheter
西川 俊昭
1
,
土肥 修司
1
Toshiaki Nishikawa
1
,
Shuji Dohi
1
1筑波大学臨床医学系麻酔科学
1Department of Anesthesiology, Institute of Clinical Medicine, University of Tsukuba
pp.603-615
発行日 1989年6月15日
Published Date 1989/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404205488
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はじめに
Swanら1)が,X線透視装置なしで肺動脈に挿入可能な先端にバルーンの付いたカテーテルを考案し,その臨床使用成績と合併症を報告したのは1970年であった。その後の約20年の間,サーミスターを備えたカテーテルが作製され,心拍出量測定も可能となり2),スワンガンツ肺動脈カテーテル(PAC)は臨床で広く使用され,得られる多くの情報は麻酔中や重症患者の循環・呼吸状態の評価と治療に貢献してきた。このカテーテルのような侵襲的なモニターの使用においては,それに伴う合併症等の危険と患者・医師の利益(得られる情報の重要性)との比率,すなわちrisk/benefit ratioを考慮する必要がある3)。Daviesら4)は,PACの使用によって,心臓・血管手術患者の死亡率が低下したかに関しては結論できないとしながらも,使用による患者の利益は危険を上回るとし,PACを挿入した約500例を検討したBoydら5)も,PACを挿入したことが80%の患者において治療管理上有益であったと判断している。
一方,PAC挿入・留置による肺動脈穿孔や不整脈,血栓症,心停止などの重篤,時に致命的な合併症の報告が散見され,カテーテルの改良や使用手順の見直しが行われてきた。また,PACの乱用の戒め3)や非侵襲的なモニターで十分との見解6)も発表されている。最近,Goreら7)は,心筋硬塞患者においてはPAC留置による情報が必ずしも患者予後に好結果をもたらしてい点いとの見解を述べている。
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