Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
自然気胸は左右の胸膜腔内のいずれか,または両側の腔内に空気が流入し,結果的に肺の膨張障害をもたらした状態で,そのうち従来より明瞭な原因が不詳な気胸症例の一群をまとめた疾患名である。しかしながら,自然気胸は明らかな原因がないとされているが、基礎疾患として自然気胸と診断されたものの6割以上の症例に肺の気腫性嚢胞としてのブラや胸膜の気腫としてのブレブが認められている1〜3)(ブラは肺胞や細気管支領域に対応する領域部に大きな空気嚢が生じた状態で,ブレブは胸膜壁内に空気嚢の生じた状態で図1に示す)。そして,これらのブラ,またはブレブよりの空気の流出が気胸の原因とされ,自然気胸を考えるに際して,ブラないしブレブ病変の解明が重要となる。それではそのブラ・ブレブ(肺の気腫性嚢胞)の原因,ないし成り立ちについてであるが,ブレブについては間質性肺気腫の一部ということで,間質性肺気腫の研究に付随した形で古くよりすすめられてきた。一方,ブラについては1960年代までに種々な学説が提唱されたが,いまだ混沌とした状態である4,5)。これはヒト切除肺材料,剖検肺材料がその主たる研究材料であって,実験動物での自然気胸例の乏しかったことなどにより,詳細な検討には一定の制約があったため,提唱された学説が確定されなかったことによる。1980年代になって,肺気腫やその他の肺の実験研究の途中でたまたまブラが実験動物に発症することが見いだされ,徐々にではあるが,実験的な方法によるブラの成因についての模索が始まった。そこで,このブラの実験研究を中心に,また胸膜のブレブを含めて,その研究の現況を述べるとともに,それらを臨床所見へ外挿して,その関連性を述べる。
Copyright © 1987, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.