気胸・嚢胞性肺疾患の手術
気腫性嚢胞に対する手術の工夫 重症巨大気腫性肺嚢胞症の手術
千原 幸司
1
,
尾北 賢治
,
玉里 滋幸
,
平野 雅幸
1静岡市立静岡病院 呼吸器外科
キーワード:
MRI
,
術後管理
,
肺切除
,
放射性核種イメージング
,
胸腔ドレナージ
,
胸部CT
,
肺ブラ
Keyword:
Magnetic Resonance Imaging
,
Postoperative Care
,
Pneumonectomy
,
Radionuclide Imaging
pp.330-338
発行日 2011年4月1日
Published Date 2011/4/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2011160944
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
41歳男。左右巨大ブラ切除、右気胸手術の既往があった。今回、呼吸困難のため薬物治療を受けるも改善せず当科紹介となった。胸部CTで両側背側に肺を内側へ向かい圧迫する巨大ブラがあり、肺動脈はところにより太いレベルで途絶していた。両側上葉の肺実質の喪失は高度で、右はブラ切除後に機能回復する肺実質は乏しかったが、左下葉には機能回復を期待できる肺血管床が見込まれた。肺血流シンチでは右上中葉に著しい血流欠損部位があり、下葉は背部がブラに一致して血流欠損し、左肺では上下葉に円弧を描いた血流欠損部位があった。ダイナミックMRIでは左右とも最大呼吸位で過剰な残気によるエラ・トラッピングを示し、左側ではparadoxical型の巨大ブラであり、これにより残存肺が圧迫されていた。より大きな障害となっている左巨大ブラ切除術を先行し、二期的に手術を行うこととした。下葉の巨大ブラを切開してブラの大半を切除後、ブラ底全体を露出してフィブリン糊貼付などを行い縫合閉鎖した。上葉も同様に処理した。術後のエアリークは軽度で、最小限の陰圧でドレナージを行い、11日目に抜去し退院となった。呼吸困難は消失し、術後3ヵ月の呼吸機能検査では著明改善を認め、患者の希望により初回手術後8ヵ月に右側に対し左側と同様の処理を行った。術後3ヵ月の血流シンチグラムでは左肺に比較して右肺の血流改善は限定的であったが、1年経過して日常生活に支障はない。
©Nankodo Co., Ltd., 2011