Japanese
English
特集 呼吸をめぐる論争
肺胞上皮癌とその発生母地
Alveolar cell carcinoma and its histogenesis: a review
玉井 誠一
1
Seiichi Tamai
1
1慶応義塾大学医学部病理学教室
1Dept. of Pathology, School of Medicine, Keio University
pp.41-50
発行日 1985年1月15日
Published Date 1985/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404204579
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私に与えられた課題は「肺胞上皮癌とその発生母地」についてであるが,論をすすめるにあたって「肺胞上皮癌」という名辞についての問題から述べなげればならない。「肺胞上皮癌」はalveolar(cell)carcinomaの訳語であるが,この語は日本肺癌学会肺癌組織分類1)にも,WHOの肺腫瘍の組織学的分類2)にも項目として採用されていない。(但し,日本肺癌学会のものには腺癌の乳頭型の亜々項目に(肺胞上皮型)という項目がある)。一方,1984年にEdwardsがalveolar carcinomaの論評を書いているが3),その内容は細気管支肺胞上皮癌(bronchiolo-alveolar(cell)carcinoma)についてであって,また日本の文献(たとえば,新内科学大系4))でも肺胞上皮癌=細気管支肺胞上皮癌として取り扱っている。
しかし,もともと「肺胞上皮癌」という名辞は,Lie—bowがその組織発生の問題を棚上げにし「細気管支肺胞上皮癌」と名付けた5)特徴ある肺癌の組織発生,細胞起源に関して激しく争われてきた論争の一方の立場を表白するものであったという事,「細気管支癌」に対置して使われていたという事を想起する必要があろう。この細胞起源の問題は,細気管支肺胞上皮癌が同一の細胞起源を有する1つの疾患単位として認められるか否かや,その病因論に連らなる問題としても重要であったはずである。
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