Japanese
English
綜説
肺胞上皮傷害と修復
Lung Injury and Repair
西岡 安彦
1
,
後東 久嗣
1
Yasuhiko Nishioka
1
,
Hisatsugu Goto
1
1徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部呼吸器・膠原病内科学分野
1Department of Respiratory Medicine & Rheumatology, Intsitute of Health Biosciences, The University of Tokushima Graduate School
pp.1146-1151
発行日 2013年12月15日
Published Date 2013/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404102366
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はじめに
肺胞は,肺胞Ⅰ型上皮細胞と肺胞Ⅱ型上皮細胞によって覆われている.細胞数では肺胞Ⅱ型上皮細胞が末梢肺細胞の約15%を占め,8~10%を占める肺胞Ⅰ型上皮細胞より多い.一方,肺胞Ⅱ型上皮細胞の形態は立方形で,広い細胞質と大きな表面積を持つ肺胞Ⅰ型上皮細胞に比較してかなり小さい細胞である.そのため肺胞表面積の90~95%は肺胞Ⅰ型上皮で占められている1).肺の主な機能はガス交換であり,そのため肺胞上皮は常に外気と直接接するとともに,血流からも血管内皮細胞を隔てて影響を受けやすい環境にある.このような解剖学的な特徴から肺胞上皮は様々な要因で傷害を受ける.急性呼吸促迫症候群(acute respiratory distress syndrome;ARDS)は急性の肺胞上皮傷害と修復が主病態となる代表的な疾患であり,滲出期,増殖期,線維化期の3段階に分けて病態が理解されてきた.一方,肺胞上皮傷害を時間軸の要素を含めて考えた場合,ARDSとは異なり慢性経過で生じる肺胞上皮傷害がある.後者の代表的疾患は特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis;IPF)であり,IPFで生じる慢性の肺胞上皮傷害とそれに続く異常修復では,ARDSとは異なる分子病態の関与が報告されている.本稿では,ARDSに代表される急性肺傷害と修復の知見をもとに,慢性肺傷害と修復に関する最近の報告にも触れてみたい.
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