呼と循ゼミナール
Bioprosthesisによる心臓弁置換(1)—その概念とGraft処理
前田 肇
1
,
堀 原一
1
1筑波大学臨床医学系外科
pp.606
発行日 1977年7月15日
Published Date 1977/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404203072
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血行動態的に優れ,長期の使用に耐え,血栓形成のない人工弁を目指して幾多の人工弁が開発されてきたが,なお理想には遠い。Bjork-Shiley弁やStarr-Edwards弁などのmechanical valveは臨床応用に一応の成果をおさめ,本邦でも現在広く用いられている。しかし,所詮人工的異物であり,長期の抗凝固剤の投与を必要とし,しかも血栓形成が5〜20%にもみられ,中心流を阻害し,溶血を生ずるなどの多くの欠点を有している。一方,生物弁は血行動態的に優れ,血栓形成が少なく,溶血がなく,開閉音も自覚されないといった優れた利点を有する反面,入手の困難性や耐久性に問題がある。生物組織としては同種・異種大動脈弁,心膜,広筋膜,脳硬膜などを用いた組織弁が利用されてきた。処理方法としても新鮮弁の使用だけでなく,凍結乾燥,水銀塩水,2〜4%ホルマリン,1%β—プロピオラクトン,放射線などの処理方法が試みられたが,いずれも耐久性に劣り,かろうじて新鮮同種弁移植が比較的良好な臨床成績をあげ,5年遠隔におけるmorbidityに関してmechanical valveに匹敵しているという報告があるにすぎない1)。
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