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はじめに 大動脈弁輪拡張症(AAE)に対する自己弁温存大動脈基部置換術(VSRR)は現在,確立された手技といえる.VSRRの手技の一つであるreimplantation法はDavidらにより報告され,当初はストレート人工血管を用いて行われた1).ストレート人工血管を使用したreimplantation法は,20年にわたる優れた長期成績が報告されている2).その後,De PaulisらがGelweave Valsalva(Terumo社,東京)を使用したreimplantation法を報告し,新しく設計された人工血管はValsalva洞の膨らみを容易に作り出すことができたため,多くの施設に普及した3).しかしながらGelweave ValsalvaはValsalva洞の自然なかたちを完全に模倣するものではなく,圧がかかると球状にふくらみ,また心室-大動脈接合部に対して垂直な交連部を欠く形態となっている.Gelweave Valsalvaを使用したreimplantation法も良好な成績が報告されているものの4),人工血管の交連部での拡大は逆流の再発を引き起こす可能性があることが報告されている5).J Graft Shield Neo(Japan Lifeline社,東京)は,内層および外層の二つの層を有する平織りダクロン製人工血管である.J Graft Shield Neo Valsalva(J-G Valsalva)は,Gelweave Valsalvaと同様に,縦方向の折り目をつくりValsalva洞の膨らんだ部分を形成している.Gelweave Valsalvaとの違いは,疑似Valsalva洞の縦ヒダがない直線部分にある(図1).再建された新しいValsalva洞がどのようなかたちをとるべきかはいまだ議論の対象であるが,J-G Valsalvaは,疑似Valsalva洞に直線部分を有し,そこへ本来の交連部を固定することができる.結果として,不完全ではあるものの,圧がかかった場合に本来のValsalva洞に近似した形態となる.われわれは,この新しい特徴を有するJ-G Valsalvaを用いたVSRRを経験したので報告する.
Valve sparing aortic root replacement (VSRR) is currently an established option for patients with annuloaortic ectasia (AAE). A newly designed Valsalva graft, the J Graft Shield Neo Valsalva, was used for VSRR in three cases. All operations were successful and postoperative courses were uneventful. Graft designs closer in shape to the native Valsalva may contribute to the improvement of late outcomes in VSRR.
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