呼と循ゼミナール
心収縮時相の評価(2)—左室駆血時間の変動
村松 準
1
1北理大学内科
pp.1026
発行日 1976年12月15日
Published Date 1976/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202985
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左室収縮時相(LVSTI)の中で,臨床上,比較的容易に測定され,かつ,応用されるものの1つに,左室駆血時間ejection time;ETがある。しかし, ETは,多くの心・脈管力学的因子により複雑な効果を受けるため,その評価には慎重であるべきである。
ETの心拍依存性は重要である。ETは心拍数が増すにつれ短縮する。病態の比較にはこの変動を基準化する必要があり,多くの補正式が報告された。Weissler (1968)1)は,心拍数とETの関係から直線回帰式を求め,心拍数=0のときを想定し,ejection time index;ETIを求めた。著者らの健常178例における補正式は,ETI=1.5 HR+ETである。しかし,実際の散点分布は,直線回帰というより,むしろ,双曲線回帰に近く,直線式とするのは,臨床応用上の便法である。さらに,ETの補正を, Bazettの式によったり,予測値にたいする%表示とする報告もある。しかし,臨床的意義は,いずれも大同小異であり,本質的な差異はない。大切なことは,個々の症例における血行力学的背景の相違を認識することである。したがって,運動負荷中,または,薬物負荷の回帰式が,安静時と相違して当然である。このさい心の収縮性にかんし注目する必要がある。
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