呼と循ゼミナール
冠血流量
中村 芳郎
1
1慶応義塾大学内科
pp.414
発行日 1974年5月15日
Published Date 1974/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202629
- 有料閲覧
- 文献概要
冠血流量が非常にたくみに生体でコントロールされていることはよく知られており,冠血流量の減少が機能的な抵抗増加で起る場合は,想像されたり,coronary arteriogram上冠状動脈のspasmusとして見られたりはしているものの,実験的に,coronary vascular reser—ve capacityが残存するのに虚血状態を作ることは非常に困難のようである。別のいい方ならば,reactive hyperemiaがおこらないけれども,灌流圧と関係なしに血流量を増すことができる状態,または逆に,reactivehyperemiaがあるのに全体的な虚血状態がある場合を作ればよいのだろうと考えられる。そして,このような状態は実験の途中では時々できているように思えるのであるが,一時的な条件であり,特に血流量が少く見えるのはゼロ点がおかしいのではないかと疑っている間に過ぎさってしまうように思えてならない。
それはともかく,冠状血流抵抗の神経性調節不全という考え方は臨床的には明かでない。実験的には,交感神経,副交感神経の冠血流量に対する影響をみたものがある1)が,神経性調節異常で,心筋が正常よりもhypoxicになっている場合がありうるか否かははっきりしていないようである。いわゆる正常人での心筋栄養血流量とでも称すべき血流量の多少は,どのようにしておこるのか,またどの程度にあるのかなどは,比較的困難な研究課題といえよう。
Copyright © 1974, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.