呼と循ゼミナール
心房中隔欠損と三尖弁逆流
谷口 興一
1
1東京医科歯科大学第2内科
pp.420
発行日 1974年5月15日
Published Date 1974/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202631
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純型の三尖弁閉鎖不全は大動脈弁閉鎖不全および僧帽弁閉鎖不全に比べて稀な疾患である。しかしながら僧帽弁膜症に合併した三尖弁閉鎖不全はそれほど稀なものではない。右心不全や著しい右心血流を呈する心房中隔欠損症においては三尖弁自体に器質的な病変を来たさなくても,三尖弁口輪の拡大により逆流が生じ,いわゆる相対的三尖弁閉鎖不全の病態像を呈する。すなわち第4ないし第5肋間胸骨左縁および右縁あるいは胸骨中央部,胸骨直下(心窩部)にlow-pichの収縮期雑音を認める。この雑音は一般に漸減性でときに収縮期全体に及ぶこともある。このような三尖弁逆流を合併すると右心側の血行動態に特徴的な変化が認められる。
右心側の心血管内圧については右房圧波形が特徴的である。すなわちx波の浅平化とv波の増高である。三尖弁逆流量が著明な場合は急峻なy下降,x波の消失が認められ,静脈拍動,肝拍動を呈するが,中隔欠損がない場合に比べて稀である。右房負荷が続けば心房細動になることもある。しかしながら大部分の症例においては右房平均圧と右室平均圧は三尖弁逆流のないASDに比較して有意に上昇することはない。
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