呼と循ゼミナール
血流量の測定
中村 芳郎
1
1慶応義塾大学内科
pp.306
発行日 1974年4月15日
Published Date 1974/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202615
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心不全の定義はなかなかむずかしく問題の多いことはわかるけれども,臨床的な立場からいえば,体組織の要求に応じた血液を循環することが心臓にできなくなった状態で,後方にはうっ血を認めると考えられる。ところが,心拍出量が減少していることを第一に認めなければならないにもかかわらず,臨床家の心不全の判定は後方障害の結果のみで行なわれる傾向がある。心不全の診断に,まず心拍出量を測定しようとする者はまずない。その理由は心拍出量測定の精度の問題か,あるいは体組織の要求に応じた血液量の判定が困難なためか,場合によって一方の理由の重要性が高まるのではあろうが,いずれかであろう。
体組織の要求するものは,血流量により送られてくる酸素,その他の物質であり,送りさるべき物質をのせる血流量である。組織にストックのない酸素が第1に問題にされるので虚血が常に問題の中心になるのは当然である。よって静脈の酸素含量を下げる(venous oxygen reserveの使用)ことにより,心拍出量は増さなくても,酸素需要は満される可能性がある。血流のdistributionを変えることによっても体組織の要求は満すことができるかもしれない。
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