Japanese
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特集 心機能検査
冠血流量
Coronary Blood Flow
伊藤 良雄
1
Yoshio Ito
1
1東京大学医学部第4内科学教室
14th Department of Internal Medicine, Faculty of Medicine, University of Tokyo
pp.53-62
発行日 1970年1月15日
Published Date 1970/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202108
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はじめに
各種心疾患の冠血流量を測定することは,その心疾患の病態生理の解明,治療方針の設定,あるいは各種治療薬の作用機序解明に役立つ。ヒトにみられる心疾患は動物で容易に作成しうるものは少ない。心臓弁膜症,先天性心疾患,冠硬化症などわれわれが日常よく遭遇する心疾患は何れも慢性に経過し,動物実験は現在のところ困難かあるいは不可能である。これらに基づく心不企,冠不全(狭心症ないし心筋硬塞症)などはことにそうである。したがってこれらの場合どうしても直接ヒトで冠血流量を測定しなければならない。ヒトで初めて冠血流量を測定したのはBingら1)の一派(1949)であり,Kety, Schmidtら2)の笑気(N2O)を用いての脳血流冠測定を冠血流量測定に応用したものである。その後レントゲンテレビジョンや,放射性同位元素が医学界に導入されるに及んでヒトの冠血流量測定に2,3の新しい方法が開発されている。これらの多くは得られた成績を笑気法のそれと比較して良く一致するとし,それを有用性の第一条件としている。われわれは長らく笑気法によう冠血流量測定を行なってきているので,これを中心に述べ,併せて最近の放射性同位元素を用いる方法に言及したい。なおその際夫々の方法のもつ長所,短所にも簡単にふれることとする。
なおヒトでの冠血流量測定には,(1)冠静脈カテーテル法,(2)冠動脈カテーテル法を用いるもの,および,(3)全くカテーテル法を用いないものがあり,この順で解説する。いずれも原理は直接ないし間接Fick法を用いるものである。Bingらの笑気法は冠静脈カテーテル法を用いるものである。
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