Japanese
English
特集 右心をめぐる諸問題
右室機能
Right Ventricular Function
中村 芳郎
1
,
中沢 博江
1
,
兼本 成斌
1
,
半田 俊之介
1
Yoshiro Nakamura
1
,
Hiroe Nakazawa
1
,
Nariaki Kanemoto
1
,
Shunnosuke Handa
1
1慶応義塾大学医学部内科
1Dept. of Med., Keio Univ. School of Med.
pp.931-941
発行日 1973年10月15日
Published Date 1973/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202545
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臨床的に右心不全または左心不全の言葉は何の疑問もなく使われているが,そこにはoversimplifyされた概念が存在しているだけである。たとえば,Woodの教科書1)には,"定義も,mechanismも,心不全の問題は多いが,表面的には臨床的事実としては単純である"として,虚血性心疾患,高血圧性心疾患または大動脈弁疾患は左心不全に始まり,次いで右心不全の症状が加わった場合,すなわち,左心不全+右心不全=うっ血性心不全となると述べられている。しかし,心不全の定義が,全身の酸素需要を充すだけの血液を駆出できない状態とすれば,その原因が左右のいずれに存在しても,他方の心もまた全身の酸素需要を充すに足りない血液を駆出しているのが心不全の状態である。この際,他方の心は単なるhypokinetic stateにあるのか,何らかの血行動態上または心筋代謝上の異常を伴なっているのか,いずれであるかは問題となろう。現在までに見られる実験研究では2〜6),主な障害を加えた心の反対側にも,種々の異常が示されている。このことは,左右に程度の差はあるにしても,心臓は常に全体として不全に陥ることを示す。内容的な差はあるが,1910年代のMackenzieのforward failureの考えと似て,厳密な意味での一側の心不全はないと考えなければいけないのかもしれない。
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