Japanese
English
ジュニアコース
呼吸と代謝(Ⅰ)
gas exchange and O2 utilization
横山 哲朗
1
Tetsuro Yokoyama
1
1慶応義塾大学医学部内科学教室
1Department of Medicine, School of Medicine Keio University
pp.921-925
発行日 1971年11月15日
Published Date 1971/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202323
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Ⅰ.呼吸と代謝
ギリシャ時代のGalenにより提唱された"pneuma"学説は,呼吸に関する素朴な理解を代表するものであるが,わが国の奈良時代にも,これに類似した説があったことはあまり知られていない。大毘婆娑論に"此息風先入口鼻,流至咽候,従咽候,至心胸,流至臍輸,漸流偏肢節"との記載がある。このいわゆる"息風"と"pneu—ma"との思想的起源の関連を追及してみることは興味深いことであるが,本稿でとりあげようとするのは思想史的考察ではなく,呼吸生理学の立場からみた,ガス運搬と利用の機序である。
呼吸ガスの運搬と利用ならびに,それに直接関連した熱代謝および酸・塩基調節は一連の現象であり,個々にきりはなしてとりあげるべきものではない。生体を一つのシステムとして考えるとき,これらの関連をもつ現象を総括的に把握してこそはじめて,問題の本質に立入ることができるといえる。ことに臨床生理学においては,生体の機能を有機的な関連の下に理解することが大切であるにもかかわらず,ややもすれば個々の現象を分離して考える傾向があるように思われる。呼吸にせよ,循環あるいは代謝にせよ,臨床生理学のそれぞれの分野において異なる専門分野の研究対象として発展してきた。この歴史的背景が現在ある以上,ある意味ではやむをえないことであるかも知れないが,生体現象の追及という観点からすれば,決して好ましいことではない。
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