今月の主題 呼吸不全—その実態と治療
呼吸不全—その考え方
横山 哲朗
1
Tetsuro Yokoyama
1
1慶応義塾大学医学部・内科学
pp.354-355
発行日 1983年3月10日
Published Date 1983/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402218168
- 有料閲覧
- 文献概要
呼吸不全の概念について
臨床医学では「--不全」という表現がしばしば用いられるが,これらは慣習的に,便宜的に用いられることが多く,「不全」という表現に一貫した理念がない.とくに日本語の場合insufficiency(Insufficienz)とfailure(Fehler)の両方に対応するものとして「不全」という表現が用いられているのが実状である.Webster's New English Dictionaryによれば,
"insufficiency":①lack of adequate sup Ply of something,②lack of physical power or capacity
"failure":inability to perform a vital function
さて呼吸不全respiratory insufficiencyとは,生体の末梢組織の代謝需要に見合う呼吸ガス(O2およびCO2)の運搬障害をきたした状態を表現するもので,いわゆる外呼吸(肺におけるガス交換)の障害のみをいうものでなく,強いて言うならば,外呼吸・呼吸ガス運搬・内呼吸の過程の高度の障害を総括的に表現する概念である.原因が肺疾患または肺機能障害に由来するものは,肺不全pulmonary insufficiency(Lungeninsufficienz)と呼ばれる.
Copyright © 1983, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.