今月の主題 呼吸不全—その実態と治療
診断
呼吸不全の診断
横山 哲朗
1
Tetsuro Yokoyama
1
1慶応義塾大学医学部・内科学
pp.362-366
発行日 1983年3月10日
Published Date 1983/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402218171
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概念的に呼吸不全が定義されても,実地臨床において個々の症例が呼吸不全の状態にあるか否かを診断しうるわけではない.診断のためには診断基準を明示する必要がある.とくに動脈血のO2および/あるいはCO2の異常があるといっても,動脈血O2分圧が異常に高値を示す場合に生体が正常な機能を営みえないことは考えられないので,これを除外すると,
1)O2およびCO2がともに異常を呈する場合
2)O2のみが異常低値を示す場合
3)O2正常でCO2が異常高値を示す場合
4)O2正常でCO2が異常低値を示す場合
が考えられる.O2が正常でCO2のみが異常を呈する場合,肺機能障害の代償機序によるときを除き,たとえば代謝性疾患に由来する動脈血ガス異常をも呼吸不全と診断すべきか否かは問題のあるところである.また呼吸不全の定義で言うところの"生体の正常な機能"とは具体的に何を指すのか,これも難問である.
多々問題のあるところではあるが,個々の症例につき呼吸不全の診断をするにあたって,また,呼吸不全の実態を疫学的に把握するためには,あるいは呼吸不全の病態の研究を推進するためには具体的な診断基準が確立されねばならない.とくに実地臨床でそれが活用されるためには,なるべく普遍的な指標にもとついて具体的な数値を明示するものであってほしい.
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