Japanese
English
綜説
肺胞膜の生化学—肺表面活性物質と微細構造に関連して
Biochemical and Electron Microscopic Studies on Pulmonary Alveolar Lining Layer
藤原 哲郎
1,2
Tetsuro Fuliwara
1,2
1東北大学医学部小児科学教室
2秋田大学医学部小児科学教室
1Department of Pediatrics, Tohoku University, School of Medicine
2Department of Pediatrics, Akita University, School of Medicine
pp.854-871
発行日 1970年10月15日
Published Date 1970/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202193
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はじめに
ガス交換の場である肺胞膜はそれ自体,代謝の活発な生物膜と考えられる。肺実質は酸素消費量が高く,脂質代謝が活発で,また肺胞細胞の新生が盛んであることは古くから知られていたが,これらの生理学的意義が不明であった。最近,肺胞上皮細胞膜と区別されるunit—membrane-like material (alveolar lining layer)が想定され,これはpulmonary surfactantと称され,肺胞の機能購造的integrityを保つのに重要な物質と考えられているが,この物質は肺実質で産生され,肺胞面に分泌(または放出)されていると想定されている。pulmonary surfactantの主要成分が燐脂質であることから,肺実質の高エネルギー代謝機構,特に燐脂質代謝との関連が注目されてきている。pulmonary surfac—tantに関しては,最近Scarpelli1)が各方面の300余の業績をモノグラフにあらわしているが,本邦でもすでに数種の解説2)〜4)がなされている。本稿では,肺胞膜の,alveolar lining layerの生化学的研究を中心にそれに関連する超微形態,界面化学の面での最近の進歩を,著者の得ている知見を合わせて解説したい。
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