巻頭言
動脈硬化症について思うこと
岸川 基明
1
1名古屋市立大学医学部第一内科
pp.853
発行日 1970年10月15日
Published Date 1970/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202192
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Rokitanskyが1852年に動脈硬化症の成因として血液凝固が関与すると述べて以来すでに一世紀以上の年月がすぎ,この間に動脈硬化症に関する研究は生化学,組織化学,免疫化学,電顕,血液学などの応用によって目ざましい発展をとげている。近年の寿命の延長とともに動脈硬化症に基づく疾患は増加の一途にあり,死因の中で最も重要なものになっている。臨床家にとって動脈硬化症の診断は30年前までは主として血管以外の臓器の機能異常や全身症状によって間接的におこなわれてきたが,今日では種々の心機能の測定法や,臓器血流量の測定,血管造影,超短波の応用,血液化学分析などによって著しい進歩を示している。
しかしながら,これらの方法には特殊なものが多く,大動脈など症状の現われ難い血管の変化の程度を診断することはきわめて困難なことである。一方,成因についても主として実験的動脈硬化症などで得られた結果から血液凝固説,脂質代謝異常説,血管壁代謝異常説など種々の学説が唱えられ,最近ではPageの高血圧におけるモザイク説と同様に,多くの因子の相乗作用として解決をはかろうとする学者も多い。
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