特集 神経学における最近の研究
<解剖>
細胞膜の微細構造
永田 功
1
,
金関 悳
1
1東京都神経科学総合研究所遺伝研究室
pp.648-650
発行日 1978年7月10日
Published Date 1978/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904878
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最近のNature誌は,"始源的環境における燐脂質と膜の合成1)"と題した1つのモデル実験を伝えている。アルゴンガス中,65℃で,燐脂質の部品(グリセリン,脂肪酸,燐酸)をアルデヒド,カオリンとともに保存し,1週間後に反応器を開けて見る。そこには,燐脂質が合成されていたばかりではなく,水溶液中ではそれは小胞状の膜として存在していた。この生体膜の起源を髴髣させる実験が示すように,通常燐脂質は,水中で,自然に疎水性基を相接し,2重層を形成し,しかも断端を接合させて,脂質2重層から成る閉じた小胞—リポゾーム—となるのである(図1)。1963年にすでに紹介されていたこのリポゾームが,70年代に入って急に注目を集め始めたのは,一時混沌としていた生体膜の構造に対する考え方が,再び,脂質2重層をその基本構造とする考え方に急転回したためである。たとえば,X線回折法による生体膜の密度分布は,脂質2重層の存在を強く裏づけ2),凍結割断法は,生体膜が連続的な脂質2重層をその基本構造として持っているからこそ,膜を凍結割断した際に,その疎水性部分に添って劈開される事実を明らかにした3)。実際,リポゾームの凍結割断面の形態(図2)と生体膜のそれ(図3)とは,粒子の有無に関する点を除けば,驚くほどよく似ているのである。
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