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はじめに
肺気腫については,1959年にCiba Guest Sympo—sium1)が「終末気管支梢より末梢の肺胞腔が壁の拡張,あるいは破砕のいずれかでその大きさを異常に増加することにより特徴づけられた状態」と定義し,「以後は剖検による以外に肺気腫という名称を用いず,従来,一般に慢性肺気腫と称してきたものを不可逆性閉塞性肺疾患と命名する」ことを提案した。この結論に即応し,わが国の肺気腫研究会2)3)では1962年に「臨床家のみている慢性肺気腫は一つの症候群であり,これと形態学的肺気腫との関連については将来の問題にする」ことを含みとし,病歴,自他覚症状,胸部(単純) X線などで肺気腫に特徴ある異常を示すことを前提として,肺機能,とくに1秒率に重点を置いた診断基準を作った。すなわち,肺機能は少なくとも1966年までは慢性肺気腫の臨床診断に重要な役割を果してきたわけである。何故なら,1967年に至り中村ら4)により4倍拡大の造影法が肺胞と末梢気管支の場に応用され,これによって肺胞位はもちろん,むしろそれ以上に末梢気道の組織構造的な変化が生前に診断可能なことが判ったからである。以後,肺機能は主に慢性肺気腫「患者」の臨床的な重症度を決める基準,症状発現と病態生理の関係,ならびにそれらに基盤を置いた治療方法の開拓と副作用などの研究3)〜15)に努力が注がれるようになった。この間10年,全国の会員から多くの研究が報告され,私らもこの動向の中にあって肺機能,とくに肺胞機能を軸とした検討を進めてきた。肺気腫研究会創立10周年記念講演会に当たり,ここでは,私らの割当てられた使命と時間(紙面)の制限上その概要を述べるに止めたい。
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