Japanese
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特集 肺気腫
慢性肺気腫(病理)
Pathological Study of Chronic Emphysema
山中 晃
1,2
Akira Yamanaka
1,2
1聖路加国際病院病理組織科
2順天堂大学医学部病理学教室
1St. Lukes International Hospital
2Department of Pathology, Juntendo University School of Medicine
pp.579-585
発行日 1970年7月15日
Published Date 1970/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202163
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まえがき
慢性肺気腫は近年臨床家の間で大きな関心の的となっており,欧米においては病理形態学的裏付けは1959年のCiba Guest Symposium以後,英国学派と米国学派の間に多少の相違はあるにせよ,おおよそ確立されている。我が国においても,肺気腫研究会が発足して10年の間に多くの業績が発表され,なかんずく東北大学諏訪教授の「肺動脈系の血圧勾配に関する理論的研究」に始まる,「肺の機能と形態,とくに肺気腫の換気力学について」に集約された一連の業績は本邦のみならず,世界的にも高く評価されるべきものである。しかし慢性肺気腫の最終診断は病理形態学的に行なわれるべきものとされ,肺気腫研究会においても,臨床方面から病理側に対し診断規準の検討確立を再三にわたって要求されながら,明確な線を打ち出すことができずに今日に至っている。これは臨床家の関心の大きさに比較して,まだ病理学者の注目する所となっていないこと,検索のため気道からフォルマリン水を注入して固定するなど,多少厄介な面があるなどもその理由にあげられるが,病理学者が肉銀観察を軽視し,顕微鏡に依存する傾向の大きいことも原因の一つとなっている。
著者らは臨床家との対話の必要上,個々の剖検例について精度の高い診断を比較的簡単に行なうことを目的として努力してきた。従来採ってきたこの方法が妥当か否かについては今後の検討をまたねばならないが,特に呼吸機能検査データと対比する問題については,なお多くの点で検討する必要が痛感される。
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