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はじめに
肺気腫の定義の詳細な点については多少の相異はあるにしても,肺気腫の定義が解剖学的なものであるべきであるという点については異議のないところであろう。しかし解剖学的定義を用いた場合の結果については十分には理解されていないのが現況である。すなわち解剖学的に定義された肺気腫は中年からそれ以上の年齢層の人々にごく普通にみられる状態であり,この場合臨床上みられる身体の無力状態は肺気腫患者のごく一部に認められるにすぎない。すなわち臨床症状を伴う肺気腫は肺気腫全体からみると氷山の一角にすぎないということになる。それでは臨床上一疾患としての肺気腫を診断する基準はどこにおくべきであろうか。このような現状にかんがみて解剖学的な所見と臨床症状,肺機能検査成績などその関連を考慮した,実際的な肺気腫の定義および診断基準が要望されるようになり,その検討が一方で行なわれてきた。これらの検討として著明で,かつ現在一般に使用されている主なものとしては,1959年のCiba Guest Symposium1)の見解や,1962年のAmerican Thoracic Society2)の見解,その他1963年のWHOの報告12)などをあげることができる。またわが国においても昭和36年7月(1961年)第3回肺気腫研究会で協同研究「肺気腫の臨床診断基準3)について」の提案がなされており,その時鈴木,金上氏,長浜,高木,山中氏などから肺気腫診断基準にたいする試案が発表されている。以来肺気腫の臨床的診断基準として示された肺気腫研究会の提案が,わが国の研究者の間で一般にひろく使用されている現状にある。しかし実際には臨床上みられる肺気腫はしばしば慢性気管支炎,ある種病型の喘息,気管支拡張症,などと混同されており,肺気腫をふくめたこれら疾患は肺内気流の持続性閉塞が特徴となっているため,慢性閉塞性肺疾患とよばれる一つの症候群を形成している。従って肺気腫自体の定義,診断基準が定っても,この診断基準が真に活用されるためには,同じく慢性閉塞性肺疾患に属する他の疾患との相互関係が確立されていることが必要である。ここではこの点に焦点をしぼって考察を加えてみたい。
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