Japanese
English
診療指針
慢性肺気腫の診断基準
Diagnostic Standard of Chronic Pujmonary Emphysema
中村 隆
1
,
滝島 任
1
Takashi Nakamura
1
,
Tamotsu Takishima
1
1東北大学医学部中村内科
1Dept. of Internal Medicine, School of Medicine, Tohoku University.
pp.510-512
発行日 1965年7月15日
Published Date 1965/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201469
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1.いとぐち
肺気腫はもともと病理解剖学的な診断名であって,肺気腫を初めて記載したLaennecによると「肺の過膨張状態で肺組織の萎縮を伴うもの」と定義されている。したがって臨床家が肺気腫を確実に診断するには,肺生検を行なう以外方法がない。しかし近年肺の病態生埋学的研究が著しく進歩し,いろいろと検討された結果,病理解剖学的に肺気腫と診断された症例は,生前多彩な病態生理学的異常を示すことが明らかにされ,ことに本症患者に特有な閉塞性障害がその発生機転にも関連して重視されるに至った。したがって現在臨床家は各種の心肺機能検査を駆使して,病理学者の手にゆだねる前に,何とか診断をつけたいと努力しているわけであるが,今日なお臨床家のいう肺気腫と病理学者が診断を下した肺気腫との間にかなりのくい違いがみられる。
したがって,肺気腫を現段階において臨床的にもまた病理学的にもどのように取扱うか,あるいは取扱いうるかを見出すのは極めて困難である。肺結核における結核菌,肺癌における癌細胞といった診断の決め手になるものが,肺気腫では見出されていないからであるが,しかし臨床的に肺気腫の診断を下し,その治療対策を円滑にするためには,本症に関する現段階での定義と診断基準について,統一された見解がぜひ必要である。
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