Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
肺胞換気の効率は,いうまでもなく肺胞換気量や吸気ガスの夫々の肺胞における分布と,肺胞毛細管血流量とのmatching,すなわちVA/QC ratioの均一性,不均一性によって決定されるものといえる。
肺内ガン分布の検討は,He,N2ガス等を用いた一回呼吸法や,反復呼吸より得たclearance curveの分析により行なわれ,坐位では正常人でも肺内ガスの不均等分布のあることが証明されている。しかしこれらの方法では,肺のある特定の部位の換気の程度を測定することは不可能である。一方lobar ventilationの測定が,MattsonおよびCarlensら,MartinおよびYoungらによってtriple-lumen catheterを用いて行なわれ,さらにMartinおよびYoungらは,N2およびCO2meterをcatheterに接続し,得られたnitrogen wash-out rateより,坐位では下葉が上葉よりも換気量の大きいことを認めた。これらの方法は,挿管を行なうために患者に苦痛や不安を与え,その結果過剰換気をひぎおこし,非生理的な状態での換気機能測定の域を出なかった。このために局所肺機能を生理的に安定した状態で測定することが望まれてきた。
この問題は,isotope gasを使用して体外計測的に局所肺機能を測定する方法により解決されるに至った。この方法は,カテーテルの挿入も必要とせず,生理的な状態で肺の各部位のガス濃度分布の測定を可能とした。このためびまん性の病変を示す肺線維症や慢性肺気腫などにおいて,肺のどの部位がどの程度に優位に機能障害に関与しているかを理解できるようになり,radioisotope gas利用による局所換気分布測定の重要性が強く認識されるようになった。
局所換気分布の測定には,133Xeおよび13N2などの難溶性ガス,および15O2およびC15O2等の易溶性ガスを利用する方法があるが,後者の易溶性ガスおよび13N2ガスは,半減期が夫々2分および10分程度ときわめて短いため,cyclotronの如き特別な設備をもった研究所ないしは病院等においてのみ使用が可能でしかないという欠点があり,最近では,energyが80keVでしかも半減期が5.3日という133Xeを用いた局所肺機能の測定が主として行なわれる傾向にある。以上の理由と,我々が数年来133Xeを用いて肺の局所機能に関する研究を行なってぎたことから,Ballら1),Bryanら2),Milic—Emiliら3)の成績を紹介しながら,著者らの成績をも加味してまとめてみたいと思う。
Copyright © 1970, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.