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Ⅱ.疾患発生上,遺伝因子と環境因子の 両者が関与すると思われる肺疾患
疾病は環境なる外因と宿主なる個体の素因との関連によって発病する場合が多いが,このような疾患における遺伝的素因の関与を明らかにする遺伝学的方法として,次のような方法が行なわれている。
1)家族内集積の証明——この場合遺伝的素因の関与も十分考えられるが,家族内に濃厚な環境因子があれば,このような家族内集積がおこりうることを常に念頭において分析しなければならない。
2)双生児法——一卵性双生児と二卵性双生児について,双生児間におけるその病気の罹患一致率に有意な差がある場合,遺伝的素因関与の証明となりうる。
3)血液の特徴と特異な病気との結びつぎの探索--たとえば血液型0型と消化性潰瘍との関係などがその例としてあげられている。血液型の他に,haptoglobin,gamma-globulin, transferrinなども遺伝因子証明の指標となりうる。
4)疾患の人種間における発生頻度の比較—同じ環境に住んでいる人種間に差がある場合には遺伝因子の関与が考慮される。
5)疾患の発生に関連する特別な因子の追求—たとえば動脈硬化症の発生上における遺伝的要因の関与を理解する上に,過コレステロール血症や脂質代謝異常を双生児法や家系内調査法によって検討することによって,役立てることがでぎる。
6)動物実験—動物実験では環境と遺伝の両者の因子をより正確にコントロールすることができる。
さて肺疾患において,遺伝的素因の問題がとりあげられる病気として,肺結核,気管支喘息,サルコイドージス,Caplan症候群,慢性肺気腫および慢性気管支炎があげられる。しかしこれらの疾患においても,遺伝学的に詳細な系統的研究は行なわれておらず,家系調査法や双生児法によって検索されているにすぎない。
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