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はじめに
細気管支炎は小児の疾患としては以前より知られていたが,成人における一つの独立疾患としての認識はわが国においても乏しいようである。
まず本症を歴史的にふりかえってみると,細気管支炎を一つの臨床病理学的概念として初めに報告したのは,Lange (1901)1)で,典型的な2剖検例を,bronchiolitis obliteransのタイトルで発表した。ついでFraenkel(1902)は硝酸の煙を吸引して発病した1臨床例を報告した。以来報告例が増加し,LaDue (1941)2)およびMcAdams (1955)3)は本症に関する詳細な文献的考察を行なっている。すなわち,LaDueは原因について三大別し,Mc Adamsは刺激性ガスの中で酸化窒素系物質の吸入を特に強調している。1956年に,Lowry4)がSillo—Filler's diseaseとして報告した急性呼吸器疾患の本態はbronchiolitis obliteransであった。病理学の立場からMc Lean (1956)5)6)は,細気管支炎の病理を浸出期と修復期にわけて詳細に記載し,さらに本症が肺気腫,肺線維症,気管支拡張症など肺の慢性疾患発生のfocal pointとして重要である点を強調している(1958)7)。さらにGiese (1960)8)は細気管支炎を病理組織学的にカルタ性,壁内性,閉塞性,細気管支周囲炎の4つの段階に分類している。
一方,わが国では,黒川ら(1961)9),沢崎ら(1962)10)による生検例の報告が,初めての記載のようである。沢崎らはとくに,本症に関する詳細な交献的綜説を行なっている。筆者11)も慢性気管支炎における細気管支炎の重要性を強調してきた。山中ら12)は,びまん性汎細気管支炎の病理について詳細に記載している。最近,本間・谷本ら13)は汎細気管支炎10剖検例の臨床所見の検討を行なっている。
本稿では,まず細気管支領域における病態生理学的特徴について考察し,ついでわれわれが最近経験している症例を呈示し,細気管支炎についての概説を試みたいと思う。
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