講座
いきこらえ(breath holding)
小林 庄一
1
Shoichi Kobayashi
1
1新潟大学医学部第2生理
1The 2nd Department of Physiology, Niigata University School of Medicine
pp.31-37
発行日 1967年1月15日
Published Date 1967/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201727
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はじめに
哺乳類や鳥類の呼吸運動の基本型は,中断されない連続的周期運動である。嚥下,鼻粘膜刺激,皮膚刺激などで中断されることがあっても,それは短時間で,反射によるものである。
水鳥や潜水性哺乳類にみられる潜水時の無呼吸はかなり長く,後者では1時間をこえることもあるが,反射性のものと考えられ,意識の関与は考えられない15)22)23)29)。
「いきこらえ」とはbreath holdingにわたくしが与えた呼称であるが17),これは意識的無呼吸などともよばれるように,その呼吸停止が意識あるいは意志によって行なわれることが特徴である。最近,Mithoefer27)は,いきこらえを「気道の閉じられている無呼吸」と定義して綜説を書いている。しかし,わたくしは,麻酔,筋弛緩の有無を問わず,ヒトや動物の気道を機械的に閉鎖した場合といきこらえとは区別して論ずべきだと考える。動物はいきをこらえてはくれないのである。
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