Japanese
English
綜説
細胞呼吸—ミトコンドリアを中心として
Cellular Respiration, with Special References to Mitochondrial Functions
佐藤 了
1
,
浅野 朗
1
Ryo Sato
1
,
Akira Asano
1
1大阪大学蛋白質研究所
1Institute for Protein Research, Osaka University
pp.848-854
発行日 1966年10月15日
Published Date 1966/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201669
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はじめに
生物体にとって呼吸のもつ本質的な意義は何であろうかと考えていくと,それは生物が生きていくためのエネルギーを栄養素の酸化分解により得ることであるというところに到達する。この過程は1つ1つの細胞のなかで行なわれていることが明らかにされたため,細胞呼吸と呼ばれるようになった。このように考えると細胞呼吸は肺をもち血液をもった高等動動だけでなく,植物も微生物も同じように活発に行なっているということができる。さらに,エネルギーを得て,そのエネルギーを生物界一般に通用する自由エネルギーの移動できる形,いわば通貨ともいえるATP (アデノシン三リン酸)の形で補捉することが細胞呼吸であると考えると,酸素の関与しない発酵や解糖もまったく同じ生理的意義をもつ現象であるからこれに含まれてもよいことになる。
ところで高等動物の細胞内における酸素消費の大部分はミトコンドリアと呼ばれる顆粒に局在していることが明らかになっている。またATPの生成ということからみてもグルコース1分子が完全酸化される際にできる38分子のATPのうち36分子まではミトコンドリアで,残りの2分子のみが可溶性画分に存在する解糖系で生成する。以上のような事情から,可溶性画分の解糖系も細胞呼吸には欠くことのできないものではあるけれども,本講ではミトコンドリアに焦点をしぼって述べる。さらに詳しいことを知りたい方は最近の綜説1)〜5)を参照されたい。
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