Japanese
English
ジュニアコース
冠不全の心電図(1)—観察を中心として
The Electrocardiogram of Coronary Insufficiency. :With Special Reference to the Observation of the Patient.
伊藤 良雄
1
,
竹内 馬左也
1
,
俵 穆子
1
Yoshio Ito
1
,
Masaya Takeuchi
1
,
Ineko Tawara
1
1東京大学医学部第4内科
1The 4th Dept. of Internal Medicine, Faculty of Medicine, Univ. of Tokyo.
pp.151-156
発行日 1966年2月15日
Published Date 1966/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201558
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はじめに
冠不全とは,心筋酸素需要に対し供給が質的あるいは量的に不足した冠循環状態に対する生理学的概念である。したがって冠血流量の減少,心仕事量の増大,血液酸素濃度の減少およびこれらの因子の結合は冠不全を起こす。この様な冠不全状態を惹起する基礎疾患としては,冠動脈硬化症,冠動脈入口部狭窄を伴う梅毒性大動脈炎,大動脈弁狭窄,大動脈弁閉鎖不全,僧帽弁狭窄,肺硬塞や種々の原因によるショック状態で血圧の低下をきたす場合,甲状腺機能亢進症,貧血,一酸化炭素中毒,肺疾患あるいは先天性心疾患で動脈血の酸素飽和度の低下した状態,エピネフリンのごとき薬物使用時,フェオクロームサイトーマらがあり,さらに冠不全の促進因子としては,高血圧,糖尿病がある。しかしながら冠不全の原因として最も頻度の高いものは,冠動脈硬化症によることは周知の通りである。
また一方臨床的には,冠不全という語は,人により解釈が異る。一般には例えば冠硬化症を始めとする上記のごとき基礎疾患の存在が推定され,心電図上ST・T変化の存在するものを冠不全と診断しているようであるが,必らずしも厳密とはいえない。冠不全状態における最も特徴的心電図変化はいうまでもなくST・T偏位であるが,この様なST・T偏位は,冠不全以外の心臓の器質的あるいは機能的因子および電解質平衡などにより左右されるものであり,またST\T変化の形態も,その症状の有無は別として時間的にも時期的にも変化するものである。
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